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* 道具・力学6:てこの原理(BC250年頃;アルキメデス)

Q6: アルキメデスは球の体積を求めた最初の人だが、最初に求めた手法は、数学を使わない意外なやり方だった。今の小学生にでもできるその方法とはどの様なものだったか?

 もう少し具体的に説明しよう。半径rの球に外接する円柱の体積は底面積(半径rの円)にその高さ(2r)を掛けたものであり、(πr^2)×2r = 2πr^3となる(^はべき乗の意味)。天秤でこの球と円柱の重さを比較すると、その比がきれいに2:3になることを発見したアルキメデスは、球の体積はおそらく2πr^3×2/3 = 4πr^3/3であろうと想像した。その後、この不思議な比率2:3に興味を持ち、今の積分法に近いやりかたで、数学的に証明してしまうのである。アルキメデスはこの関係が非常に気に入っていたらしく、自分の墓に球とそれに外接する円柱の図形を刻んでいる。アルキメデスの考え方は、後にライプニッツが発展させて、微分積分法として約1800年後に確立することになった。

 アルキメデスはこのように球の体積や円周率を数学的に求めているため、理論的考察に強い天才とみなされている。しかし、彼を理論の側面だけから捉えると、その偉大さの半分以上を理解していない。このクイズの例に見るように、彼はまず実験や観察により想像力を働かせることをむしろ得意とした。有名な浮力の原理(アルキメデスの原理)を見つけたのも風呂に入って浮遊感を経験していた時であって、思わず風呂から飛び出し「エウレカ、エウレカ(分かった、分かった)」と叫びながら、裸で走り回ったのである。

 アルキメデスのこの実験好きは、幼い頃に天秤をおもちゃにして遊んでいた事から来ている。天秤はエジプトの古代壁画にも描かれているように、すでにエジプト時代から商取引に使われており、ギリシャ時代においても、貴金属の重さを測る大切な道具であった。又、アルキメデスの父親が天文家だったため、天体観測や天秤などの計測器に囲まれ、子供の頃から観測や測定に夢中になり、「実験遊び」で育っていたらしい。この体験が後に学んだ数学より実践的思考の方を優先させる要因になったようだ。

 アルキメデスは、「てこの原理」、「重心の概念」、「比重の概念」などを発見しているが、これらも天秤のしくみや計測を実践していった「遊び」、つまり「いたずら」的センスから発想しているように思われてならない。決して数学ガチガチの思考パターンではないのである。それを証拠づけるのが、機械の発明の数々。天秤やてこを応用した「カタパルト(投石器)」や「船を上げ降ろすための滑車」、ネジの基になった「スクリュー式揚水機(ポンプ)」など機械工学の父とも言える立派な発明を行い、特に兵器として使われた投石器は当時最強のローマ軍からも恐れられていたようだ。

 当時、ローマとギリシャは第2次ポエニ戦争の真っ只中にあり、ローマ軍はギリシャの天才アルキメデスのことをよく知っていた。それはアルキメデスが発明したこれらの兵器に散々悩ませられていたからである。しかしローマ軍はギリシャをどんどん打ち破り、ついにアルキメデスの住んでいた市内にも侵攻してきた。ここで、ローマ軍の将軍は「アルキメデスを生け捕りにし、決して殺してはならない」という厳命を言い渡したといわれている。おそらくこの名声とどろく天才をローマでも使いたかったのだろう。ところが、あるローマ兵士が、市内に侵攻したとき、兵士の言うことも利かず地面に図形を書いて座り込んでいる老人を見つける。そして老人は兵士に言う、「そこをどけ、私の図を踏むな」と。兵士は激高しその思索にふけっていた老人アルキメデスを殺してしまった。ローマ将軍はアルキメデスの優れた才能を惜しみ、その墓を作って供養したと伝えられている。

 ところで、これらアルキメデスの実験・発明好きは、その天才的な数学的思考と融合し、哲学的思索に終始する当時のギリシア哲学とは異なり、実証により真理を確認するという科学的思考の基となった。そしてこのような実験に基づく思考スタイルは後のガリレオに多大な影響を与え、自然科学なる文化を発生させたのである。又、ユニークな発明の才能は後の機械工学を生み出し、レオナルド・ダビンチを経由し産業文明を築くことにもつながっている。ヘレニズム時代に生まれたこの天才が、他の多くの哲学者に比べ現在でも新鮮さとユニークさを失わないのは、当時軽んじられていた「実験」や「実証」を数学や哲学と同等かそれ以上に重視していたからに他ならない。

宿題6:アルキメデスは「てこ」を発明し、「われに支点を与えよ、しからばわれ地球を持ち上げん」という名言を吐いたと言われている。では60Kgの力で地球を1mm動かすのに必要な「てこ」の長さと、その持ち下げ距離はいくらか?(ヒント、地球の重さは約6000000000兆トン=6×10^21トン、第23話:キャベンディッシュの項参照)

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